横浜が取り組むジェンダーと多様性のいまを知る
多様化が加速し、これまで当たり前のように受け入れられていた「普通」が揺らぎはじめているこの時代。
近年、同性婚やLGBTQなどの話題もあり、「ジェンダー」は、「多様性」とセットで語られる代表的なトピックではないかと思います。
女性としてのあり方、生き方、幸せの形も皆それぞれ。これからの時代は、周囲と同じように振る舞うのではなく、個々人が「自分はどうありたいか」を考える必要がありそうです。
このような変化の流れの中、横浜市でもジェンダーについて考える様々な取り組みが行われています。2024年2月には、戸塚区の「フォーラム」にてジェンダーにまつわるトークイベントが開催されました。
「~自分軸で考えよう~ Z世代・ジェンダーとからだの話」と題されたこちらのイベントは、若い世代を中心としてジェンダーについて学ぶ機会となり、白熱した意見交換も行われました。
イベント当日のレポートは、こちら▼
イベントの第2部では、フェリス女学院大学の学生さんによる発表が行われ、その真剣な姿はとても印象的でした。
フェリス女学院大学に登場した、新しい時代を生きる女性の育成機関
イベントに登壇していたのは、フェリス女学院大学ジェンダースタディーズセンター(愛称:Gem〈ジェム〉)の学生スタッフの皆さん。ジェンダー問題に深い関心を持つ学生さんたちです。
フェリス女学院大学といえば、日本でも有数の女子大学のひとつ。150年以上にもわたり女子教育の最先端を担ってきました。
そんなフェリス女学院大学で、2023年に誕生したのがジェンダースタディーズセンター(以下、Gem)です。同年に新設された副専攻「ジェンダーとキャリア」の拠点機関として発足し、新しい時代を切り拓く女性を育成するために、教育・研究・キャリア支援の3つの軸から様々な取り組みを行っています。そんなGemの活動を支えているのは、有志で集まった学生スタッフたちです。
「Gemには、自ら問題を見つけ出し、解決に向けて情熱とエネルギーを持って働きかける学生たちが集まっています」
そう語るのは、フェリス女学院大学の山本 千晶准教授。セクシュアル・ハラスメントやDV等に関するジェンダー視点での研究を専門とし、Gemの運営にも携わっています。
「自分たちの活動を単なる学生の課外活動に留めず、既存の価値観を打ち破るリーダーシップの持ち主たちです」
そんなGemの学生スタッフたちは、一体どのような思いで活動にとりくんでいるのでしょうか?
今回は、Gemの学生スタッフの中から代表して3名の学生さんに、お話を伺いました。
お話を伺った学生さん
・古谷さん:日本語日本文学科4年生
・テイアさん:コミュニケーション学科3年生
・芦川さん:大学院生
それぞれのバックグラウンドから、ジェンダー問題に興味を持つ
はじめに、それぞれがジェンダー問題に興味を持った経緯を話していただきました。
古谷さんは、大学に入学する前からジェンダー問題に関心を持っていたそうです。きっかけは、友人に勧められてはじめたSNSでした。
古谷さん:
Twitter(現在の「X」)でジェンダー関連の投稿がたびたび話題となるのを見かけ、興味を持つようになりました。でも当時は、自分の中の問題意識をどう言語化すれば良いか分からなくて。大学に入ったら、ジェンダーについて学ぼうと思いました。授業を通してジェンダーに関する用語などを勉強できたことが、私の中で大きな財産となっています。
古谷さんの専攻は日本語日本文学ですが、フェリス女学院大学には、学部学科の垣根を越えて自分の関心のある分野を学べる環境が用意されています。
テイアさんも、大学入学前からジェンダーについて考えていました。
テイアさん:
日常の中で違和感を覚えることが度々ありました。例えば、『女性らしさ/男性らしさ』の枠に当てはめようとする発言はなぜ生まれるのだろう?などといったことです。古谷さんと同じように、大学で学ぶことで、そんな自分の思いを論理的に表現できるようになりました。
古谷さんとテイアさんはGemが発足する前から、別の学生団体でジェンダーについての議論を交わしていたそうです。Gemができてからは、大学のバックアップもあり、さらに活動の幅が広がりました。
テイアさん:
キャリア支援の一環として、現在社会で活躍されている女性を招き、お話を伺ったこともありました。女性リーダーのロールモデルとして、参考になるお話が聞けました。
フェリス女学院大学は、ジェンダーについて学べる授業が充実しています。そのため、授業をきっかけにジェンダー問題に関心を持つようになる学生さんが大勢いるそうです。芦川さんもそのひとりでした。
芦川さん:
様々な授業を受けるうちに、セクハラや性暴力について関心を持つようになりました。女性である以上、身近な問題になってしまっているのだと、当事者意識が芽生えました。
興味を持ったきっかけや、問題意識は皆それぞれ。しかし、Gemに集まる思いは共通しています。
テイアさん:
1人で考えるだけでなく、もっとたくさんの人と関わって話し合いたい、という思いでGemの活動に参加しています。
古谷さん:
ジェンダー問題ついて、より多くの人に「自分事」で考えてもらいたいです。
それぞれの背景を持ちながらも、Gemの学生は皆、ジェンダー問題を共有し、共に考えることを大切にしています。
性について本音で語る「cafe Gem」
Gemの中でも、特に学生スタッフが力を入れている活動のひとつが「cafe Gem」です。これは毎月2回、お昼休みに学生たちで集まり、1つのテーマについて話し合いをするイベントです。生理のこと、からだの悩み、モヤモヤ共有、性的同意や避妊についてなど、扱うテーマはさまざま。Gemのスタッフ以外の学生も参加することができ、女性どうし、学生どうし、お互いに本音をぶつけ合える場所となっています。
芦川さん:
ジェンダー問題は、誰にとっても身近な問題です。はっきりとした問題意識を持っていなくても、モヤっとしている人は多いのではないかと思います。そんな時に、意見を共有できる場がフェリスにはあります。このことを、もっと多くの人に知ってもらいたいです。
古谷さんも、大学に入るまでジェンダーについて話す機会が全くなかったからこそ、話し合うことの大切さを感じています。
古谷さん:
SNSで色々な意見を見かけるけれど、実際に自分の身近な人が何を考えているか分からず、孤立感を抱いていました。だからこそ、年齢の近い友人と腹を割って話せる環境は私にとってもとても貴重な場となっています。
大切なのは、話し合うこと
ジェンダー(性)の話題は、往々にしてセンシティブです。立場や考え方の違いから、相手を傷つけてしまう恐れもあります。気軽に話題にしづらいからこそ、自分の考えをシェアし、相手の考えを知ることのできるcafe Gemのような場が必要とされています。
しかし皆が皆、同じ考えを持っている訳ではありません。相手と考え方が違ってしまうことについて、学生さんたちはどのように考えているのでしょうか?
テイアさん:
ジェンダーに関しては、色々な考え方があります。例えば私は「男女の枠に囚われたくない」と思っていますが、ジェンダー問題に取り組む仲間の中には「女性として、女性のために活動したい」と考える人もいます。違う意見を持った人どうしが話し合うことで、多様性のある社会を保てれば良いな、と考えています。
古谷さん:
意見が違ったとしても、それはそれで勉強になります。「違和感を抱いているのは自分だけじゃない」と思えるだけで、話し合えて良かったと思うんです。
考え方が違ったとしても、それはそれでいい。大切なのは、面と向かって話し合うこと。芦川さんも、改めてGemの活動の意義を語ってくれました。
芦川さん:
Gemの活動を通して、実際に何かの問題を解決できれば素晴らしいと思います。でも、無理にひとつの結論を出さなくても、このような活動に参加すること自体に大きな意味があると思っています。
意見が違ったとしても、お互いを尊重する。そのために学び、話し合う。
実際の活動を通して実践できるGemは、まさにこれからの時代を切り開いていく人材の集まる場所でした。
数年後、彼女たちは、ジェンダー平等や多様性の享受の点ではまだまだ“発展途上”である日本社会へ羽ばたいていきます。
Gemでの活動の一つ一つが、これからのあたらしい未来を自らの手で作り上げる勇気と「心のお守り」となることを、ココハマ.は願っています。
◇インタビュー・記事執筆:辺見美咲 ◇イラスト:駒込 ◇編集・デザイン:ココハマ.編集部
「フェリス女学院大学 ジェンダースタディーズセンター」
神奈川県横浜市泉区緑園4-5-3 フェリス女学院大学緑園キャンパスCLA棟2F
【相鉄いずみ野線「緑園都市駅」下車 徒歩約3分】
◯フェリス女学院大学公式HP内 Gem紹介ページ
https://www.ferris.ac.jp/life/gender-studies-center/
◯Gemスタッフ更新 センターHP
https://www.ferrisgender.com/
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